タイトルって、難しくするとわけわかんないし、かといって簡単すぎるとつまらない。印象に残らない。
作品全体を示す言葉でないといけないけれど、分かりすぎるとオチが見えてしまうこともあって。
いつも書くたびに悩むのは私だけじゃない。・・・はずだと思いたい。
DMCに関しては、なんか英語タイトルが定着しちゃって、それはそれで単語を探すのが大変だけど楽しい。
辞書が手放せない。
ぱっとタイトルが浮ぶ時もあれば、全然ひらめかなくて。
今日も閃きませんでした。
という話。
絵茶派生ネタ。
黒へたれじゃなくて、ダンネロだけど、ちょっと違う。
あえて設定は現代パロにしてみました。
OKの方のみどうぞ。
続いてしまいました・・・。
私立高校の登下校時はいろいろと珍しいものが見える。毎日のことなのでもう慣れてしまった。
国内で数台しかないという限定高級車。それはベンツなどのシックなものもあれば、スポーツカーもある。系統は違えど高級車は高級車。乗り降りするのは専ら生徒。 裕福な家庭と裕福な恋人。裕福なパパ。形は様々だが、生徒にとってはそれが当たり前で、それを見るたびにダンテはため息をつく。
自分もこの学校の卒業生で、少なからず似たような扱いをされてきた。
当時、父はこのDMC学園の学長を務めていて、当然のように入学した。兄も一緒だったけれど、父の溺愛ぶりは異常なほどで、送迎は当然。なにかあれば、学長職ほほかってでも飛んでくる。
それが当たり前だったと・・・思っていたのだが、大人になった今、異常だとはっきりわかる。
校門から、塀伝いに連なる高級車群。女子生徒も男子生徒も、迎えに来た高級車に乗り込み、ダンテに手を振って帰っていく。
そんな中、高級車とはいえない車に乗り込む男子生徒を見た。
ネロ。
教師ではなく、医師として学園に勤務するダンテは、もちろん受け持っている学科もないが、容姿がやけに目立つ生徒で、成績もいい。運動もさることながら、意外な家庭的な面があることも手伝って、生徒やや教師の間でも人気があるようだが、本人はまったく無頓着で、物静か。
そんな彼の家のことなど知らないが、一般庶民が乗るような車に平然と乗り込む姿は、この場所では異質で、なぜかダンテの心に酷く印象付けた。
通り過ぎていく車。運転席にいたのは、男だったが、とても父親とは思えないほど似ていない。
「先生、また明日ね~」
窓を開けて手を振っていく女子生徒。ダンテは軽く手を振るが、すぐに車は発進して去っていく。
いつの間にか車の群はなくなり、ダンテは校門に立ったまま先を見つめた。
翌日。
医務室でノートパソコンをひらいて書類を作る・・・と言っても大したものではなく、毎月掲示板に貼る「医務室の考察」という、なんとも堅苦しい紙面だ。今月は身体測定があるからネタに困らず、カタカタとキーボードを打ち込んでいく。
不意にタバコが吸いたくなって、白衣の胸ポケットを探りながら外に出ると、グラウンドで生徒達が元気に走り回っていた。
「若いっていいねぇ」
ぷか、と白い煙を吐いて、窓ガラスにもたれかかる。
「・・・オイ」
「ん?」
タバコを咥えて深く吸い込む。吐き出しながら振り向くと、ブレザーを着崩した男子生徒が室内からダンテを睨んでいた。
銀の髪に瑠璃の瞳・・・綺麗な顔立ちをしているが、彼は男で。昨日、普通車に乗り込んで帰っていった、ネロだった。
「ちょっと待ってな」
もうすぐで吸い終わるから、とタバコを見せ付けて、ダンテは笑う。
明らかにネロは不機嫌そうな顔をしていたが、ベッドに腰掛けてダンテを待った。
からからと窓ガラスを開けてダンテが入ってくる。
「え~と、ネロだったな。どうした?具合でも悪いか」
ここはそういう場所なのだが、たまに仮病を使ってくる生徒もいて、思わず聞いてしまう。
けれど、ネロは本当に具合が悪いのか、素直に頷いた。
心なしか顔が赤い。熱でもあるのかと、ダンテの手がネロの額に触れる。
「・・・微熱か。だるいんだろ?帰ってもいいぞ」
「放課後まで寝ていいか」
「帰ったほうが楽じゃないか?」
「帰れない、から、・・・」
「ふうん?ブレザー脱いでネクタイ外しとけ。一応薬と氷枕用意してやる」
ほっと、明らかに安心したように息を吐いたのは気のせいだっただろうか。ダンテは大人しくブレザーを脱いでネクタイを外すネロを見届けると、薬と氷枕を用意してやった。
ブレザーとネクタイをハンガーにかける。薬を飲んで氷枕に頭を寝かせるネロに「おやすみ」と告げて仕切りのカーテンを引いた。
キーボードの打つ音と時計の音。それが気になって、ネロは眠れないでいた。体は疲れていて、眠気もあるというのに、なかなか寝付けなくて寝返りばかりを打っていた。
熱とけだるさがうっとうしい。息苦しさに胸をかき抱いた。強く目を瞑り、息苦しいのにも関わらず、息を詰めた。
意識が遠のく。それは、眠りに陥るのではなく、息苦しさから朦朧としただけだ。だから、ダンテが近づいていることに全く気づきもしなかった。
「・・・大丈夫か?」
びく、と体が強張る。
一応気遣っているのか、カーテン越しに声をかけられる。は、と目を見開いて、止めていた呼吸が再開すると、浅く速く繰り返した。
「だ、いじょうぶ・・・だ」
「ならいいが・・・開けるぞ?」
「・・・どうぞ」
なぜ大丈夫と言っているのに─といっても明らかに大丈夫ではない気配を漂わせていることはネロもわかっていたが─ダンテがカーテンを開ける。
汗を垂らすネロの頬は上気して、きつくダンテを見上げた。
「眠れないか?」
「・・・」
「普段から?」
「昨日、から」
「・・・かといって今眠剤はよろしくないな。・・・ふむ。お兄さんが子守唄を歌ってやろう」
丸椅子を引きずって、傍らに陣取る。拒む間も与えず、ダンテの手がネロの額に触れた。反射的に目を閉じる。
熱を持った体にはほどよく冷たい手だった。明らかに、"冷やした手"だった。
ほ、と息を吐いたネロはなぜか素直にそれを受け入れた。
一瞬強張った体から力が抜けていく。それは、自分でも不思議なくらい、自然だった。
「Country roads, take me home
To the place I belon
West Virginia, mountain momma
Take me home, country roads」
ダンテの低音が、かの有名な曲を奏でる。とても小さな、けれど心地よい声音にネロは暴れていた感情がゆっくり収まっていくのに気づいた。
開け放たれた大きな窓から風がゆるやかにカーテンを揺らした。
浸透する声が、体だけでなく心を落ち着かせ、ネロはいの間にか眠ってしまっていた。
高校生と言ってもまだまだ子供か、とダンテは苦笑する。ネロが完全に寝入ったのを確認すると、歌をやめた。
「・・・昨日、か」
確か、男と帰って行ったな、と思い出す。それが誰なのかは知らないし、顔も覚えてはいないが、迎えに来てもらえばいいのにと思う。ネロは"帰れない"と言った。それはつまり、"迎えに来てくれない"というこだろうか。
放課後まで眠れば体調も落ち着いて、迎えも来るだろう。
「着替えさせるか」
額につけていた手がネロの汗で濡れていた。眠ったといっても、このままでは風邪を悪化させる。そう思って、白いカッターシャツに手を伸ばした。
「・・・っ」
ボタンを外そうとした手が止まり、ダンテはゆっくり手を放した。まさか、と思いつつ、それでも今目の前にあるモノが真実で。見間違えようも無い痕跡は、さすがのダンテも動揺を隠せなかった。
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